トグル制震ブレースとは?

トグル制震ブレースとは2本の腕と1本のオイルダンパーで構成され、てこの原理を応用することにより地震エネルギーを効率よく吸収して、地震によっておこる建物の揺れを抑えることができる制振装置です。(株)E&CSが製造・販売しています。

(株)E&CS ウェブサイト

RESP-Dでも2019年5月にトグル制震ブレースに対応しました。これまで存在は知っていてもなかなか検討するのは難儀だったのですが、RESP-Dがあれば通常の制振装置と同等の手間で検討が行えるようになりました。

トグル制震ブレースの配置(写真 : (株)E&CS提供)

 

オイルダンパーブレースと制振効果を比較する

弊社の新館と呼ばれるオフィスはオイルダンパーブレースが使われています。

 

トグル制震ブレースはてこの原理による増幅機構を有しているため、単純にオイルダンパーブレースをトグル制震ブレースに置き換えると減衰効率がよく、より容量の小さいダンパーでも同等の性能が発揮できると予想されます。

そこで、試しに解析してみることにしました。

解析モデル

弊社新館は地下2階、地上9階の鉄骨造建物となります。

オイルダンパー

トグル制震ブレース

 

トグル制震ブレースの配置は符号定義すればほかの部材同様クリックだけで配置できます。中間節点の定義などはプログラム内部で行われるため非常に簡単です。

 

トグル制震ブレースの配置

 

 

今回はX方向加振とします。

現在のオイルダンパーブレースの配置と、トグル制震ブレースを配置したモデルを示します。

なお、オイルダンパーは500kN級のダンパーを、トグル制震ブレースのダンパーは300kN級を用いています。トグル制震ブレースは増幅効果があるため、ダンパー容量が小さくても高い減衰効果を発揮すると予想されます。

地震波はEl Centro NS, Taft EW, Hachinohe EW, BCJ-L2波を用いました。

観測波は最大速度50kine相当に基準化しています。

 

解析結果

各層の最大応答値のグラフを示します。

オイルダンパーブレースと比較して、ダンパー容量を小さく設定したトグル制震ブレースは層間変形角が同等か小さく抑えられています。

予想通り、確かにトグル制震ブレースのほうが効率よくエネルギー吸収ができているという結果となりました。

 

最大応答値(緑 : オイルダンパー 500kN赤 : トグル制震ブレース 300kN

 

イメージが湧きやすいよう、アニメーションも作ってみました。変形倍率は80倍にしています。トグルの腕が動くことにより変形が増幅する様子が見て取れます。

トグル制震ブレースアニメーション

 

ただし、今回の検討では弊社新館のオイルダンパーが500kN級であることから、比較としてトグル制震ブレースは300KN級を用いていますが、メーカーによると「300kNオイルダンパーは製造可能ですが、技術性能評価では500KNと850KNオイルダンパーが対象となっているため、あまりお勧めしていません」とのことでした。

 

解析結果(ダンパー容量が同じの場合)

同容量のダンパーを用いた場合にどの程度の応答差が生じるのかも追加で確認してみました。同容量の場合、全体的にトグル制震ブレースのほうが応答が低減できている様子が確認できており、最大で2/3程度まで変形が低下しています。

最大応答値(緑 : オイルダンパー 500kN赤 : トグル制震ブレース 500kN

 

セミナーのご案内

7月30日に(株)E&CSにご協力いただき、セミナーを開催します。

本セミナーでは(株)E&CS様にご協力いただき、トグル制震ブレースの特長や設計上の留意点など実務的な内容をお話しいただきます。 弊社からは、工作物に対する制振補強の事例紹介や、RESPによる制振機能やトグル制震ブレースの計算を実例を交えてご紹介する予定です。

これまでなかなか手軽に検討することが難しかったトグル制震ブレースを含め、RESP-Dを使った制振構造の検討をより活用していただけるヒントとなるような講演を予定しています。企業の方も学生の方も、どなたでも無償でご参加いただけますので、奮ってご参加ください。

 

▼お申込みフォーム(事前申込制)
https://kke.lmsg.jp/p/bZymuL

 

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