概要
非線形の地震応答解析を行っていると、部材の履歴を確認することはよくあります。通常は履歴を散布図としてグラフ化して確認することになると思いますが、複雑な履歴の場合1ステップずつ追いかけないと何が起きているのかよくわからないこともあります。
そこで、簡単にアニメーションとして可視化してみました。
なお、詳細なプログラムの解説は後日別のところで書こうと思います。
実例
早速ですが実際に可視化した例を示します。
左上のPlayボタンをクリックするとアニメーションが動き出します。
調整していないので片振れしているものもありますが、あくまで特徴を捉えるということでご理解ください。
標準型
標準型は鋼材の履歴特性でよく用いられる、基本的な履歴則の一つです。除荷履歴は順載荷の骨格曲線に対して2倍の相似形となるMasing則と呼ばれる規則に基づいた履歴となります。
Masing則としては正負対称だと骨格曲線のちょうど2倍の大きさの骨格曲線で除荷することになりますが、正負非対称の場合は正側+負側の分の倍率となりますので注意が必要です。
正負対称
武田型
武田型は鉄筋コンクリートの曲げ特性によく用いられる履歴則です。トリリニアを前提としており、第1折点がひび割れ、第2折点が鉄筋降伏を表しています。ひび割れ後もある程度エネルギー吸収能力がありますが、降伏後に顕著なエネルギー吸収能力を発揮します。X軸をまたぐ際に剛性変更が生じるという点も形状として特徴的です。
原点指向型
除荷勾配は常に原点に向かう履歴です。エネルギー吸収能力が小さい、耐震壁のせん断履歴などに用いることが一般的です。ですが、シンプルに見えて実は考え方が分かれる部分があります。例えば正側で剛性低下を生じて原点に戻った後、負側にまだ剛性低下が生じていない場合には剛性復帰するか、あるいは正側で低下した剛性のまま原点を通過するかという違いです。これは対象問題によってどちらのほうが現象を表すか判断する必要があります。
原点通過
原点剛性復帰
最大点指向型
除荷勾配は逆側の経験最大応答点に向かうような履歴則です。原点指向型と同じく、比較的エネルギー吸収能力が小さい耐震壁のせん断履歴などに用いることが一般的です。
スリップ型
スリップ型は第1象限、第3象限のみに履歴を描くような履歴則です。たとえば引張専用ブレースをモデル化する場合に圧縮側だけ微小な耐力を設定したとしても、標準型の履歴則を設定すると圧縮から除荷時にはすぐに引張力が発生してしまい、意図する挙動になりません。このような場合、スリップ型を用いることで解決できます。X型ブレースで常にどちらかのブレースが引張になるような場合、2本のブレースの骨格曲線を組み合わせた形で対称なスリップ型の骨格曲線を用いることも行われます。
まとめ
今回は基本的な履歴則について、アニメーションで確認してみました。
次回以降は、免震部材やダンパーなどやや特殊な履歴についても同様に確認を行っていきたいと思っています。
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