機能概要
RESP-Dに告示による要求スペクトルと建物の耐力スペクトル(等価1自由度における骨格曲線)を計算する機能を追加しました。この機能により、キャパシティスペクトル法、いわゆる等価線形化法による評価をより手軽に行えるようになりました。
なお、等価線形化法は米国基準や限界耐力計算にも取り入れられている応答評価法ですが、本機能は基準法に沿った限界耐力計算が行えるというものではありません。あくまで等価線形化法の部分のみの機能となりますので、基準法の枠にとらわれず、一つの応答評価手法としてご活用いただければと思います。
関連する書籍を以下に挙げておきます。
鉄筋コンクリート造建物の等価線形化法に基づく耐震性能評価型設計指針(案)・同解説
建築物の耐震性能評価手法の現状と課題 : 限界耐力計算・エネルギー法・時刻歴応答解析
使い方
CSV出力から、以下の項目でそれぞれ出力できます。本記事のタイトルは告示要求スペクトルですが、地震波を定義した場合にはそれぞれの地震波のスペクトルとの交点を求めるための機能も用意しています。
出力できる項目
- 等価1自由度のSa-Sd曲線
- 等価1自由度のheq-Sd曲線
- 告示スペクトル(基盤、表層、表層Fh考慮)
- 地震波のスペクトル(減衰定数5%~20%)
- 地震波のスペクトルと等価減衰定数が交わる時点の等価変位、等価加速度
告示スペクトル
地震波のスペクトル
このうち、等価減衰定数は部材ごとに履歴エネルギー吸収能力に対応した減衰定数をステップごとに計算し、それぞれの部材の減衰定数を集約して等価になるような1自由度系の減衰定数を計算しています。
計算方法の詳細は、本記事では省略します。
計算例
告示スペクトルによる応答評価
実際に7層のRC建物で計算してみます。
以下は出力されるCSVファイルをそのままグラフ化したものです。
耐力スペクトルとして、等価1自由度化した骨格曲線(縦軸を等価加速度、横軸を等価変位にしたSa-Sd曲線)を図化すると以下の通りです。
続いて、変形が増加するとともに履歴減衰が生じてきますが、それを減衰定数としてあらわした等価減衰定数heqと等価変位Sdの関係を図化します。
つづいて告示スペクトルです。基盤、表層に加え、上述の減衰定数を考慮して加速度低減を行ったもの(Fh低減)も併せて描画しています。表層地盤は第2種を想定しています。
最後に、建物のSa-Sd曲線と低減を考慮した表層スペクトルを重ねています。
今回の結果では、ぎりぎり交点が求まっており、要求されるスペクトル以上の性能を有していることが確認できます。
地震波による応答評価
先ほどと同様のモデルについて、地震波による応答評価を行います。
この時点では建物の減衰定数がどの程度になるかわからないため、RESP-Dが自動的に5~20%の減衰定数によるスペクトルを計算して出力します。
スペクトルは以下のようになります(以降、告示波神戸位相について図を載せます)。
建物の耐力スペクトル(Sa-Sd曲線)との交点を求める必要があります。Sa-Sd曲線と重ねたグラフが以下となります。
それぞれのスペクトルに対する交点を求めることができますが、実際には建物の応答変位によって減衰定数は変わるため、どの減衰定数におけるスペクトルとの交点を採用すべきかこれだけではわかりません。これを特定するため、RESP-Dの出力では、各減衰定数に対応した交点もCSV出力しています。これは、ある減衰定数における要求スペクトル上で、対象建物の減衰定数が要求スペクトルで想定している減衰定数と一致した時点の等価変位、等価加速度を算出したものになります。したがって、この交点と要求スペクトル、耐力スペクトルのすべてが交わる点が、減衰を考慮した真の応答値となります。
減衰定数のグラフに、上記をプロットしたものが下記になります。
減衰定数7%付近でちょうど交点が釣り合っていることが確認できます。
実際に応答点となる7%減衰時のスペクトルと、併せて5%,10%のスペクトルおよび耐力スペクトルを描画したものが以下になります。この減衰定数7%における交点が応答値ということになります。
まとめ
RESP-Dの機能により、等価線形化法が比較的簡単に行えるようになりました。評価が面倒な履歴減衰についても、プッシュオーバーするだけで求めることができます。ぜひご活用ください。
今回使用したソフト RESP-D