問題:部分地下を有する以下の建物において、赤枠で示す部分の長期支点反力が大きくなっているのはなぜでしょうか?
条件
10階+地下3階 RC造
X1-X5通りは地下2階、X5-X10通りは地下3階
地下部分の外周は耐力壁を配置
基礎部の境界条件はピン
※地下2階は「ばね」支持としているが、鉛直方向に十分剛なピン支持の状態を再現しています。
地下2階までしかないX1~X4通りのうち、床の負担面積としては一見大きくならなさそうなY1-X4節点の支点反力が他と比べて大きくなっています。
床の荷重や外周を囲む耐震壁がX4通り付近だけ重くしているわけでもありません。
また、梁も地下のため断面の大きい梁を採用していますが、この部分だけ重くしていることはありません。
考えている間にネタバレしないように、少し間隔をあけておきます。
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答え:耐震壁が取り付くことでX4-X5間の梁の剛性が大きくなり、地下3階があるX4以降の範囲の荷重を梁が支えてしまうため。
耐力壁が取り付く梁は十分剛な状態になるため、梁にぶら下がるような形で地下3階部分の範囲を支えてしまい鉛直方向に完全に剛な支持ばねを設けてしまうとその位置の反力が大きくなってしまうという問題でした。
モデル上側(Y5-Y6)も耐震壁が取り付いているため、負担する床面積に対して反力は大きいですが、スパンが短く支持点が多いため極端に反力が大きくはなっていません。このようにスパンが短い場合はあまり気にならないことが多いです。
また、地下3階の柱断面が大きい場合についても梁が負担する応力が小さくなるため、反力が大きくなりにくくなります。
反力が大きい場合の対策として
- 支持ばねの鉛直剛性を適切に評価する
→実際の建物としてはロッキング的な動きが生じることから、基礎部は鉛直方向に完全な剛になるわけでなく各支点上下にバネが取り付くような状態になっています。この鉛直ばねを適切に評価すると梁への負担が緩和され、局所的な反力集中が生じにくくなります。ただし、地下3階のバネより地下2階のバネが極端に固い状況など、条件によっては逆効果になることもあります。
- 長期応力について柱の軸変形を考慮しない
→今回のケースでは地下3階の柱が軸変形するため、梁にぶら下がる形となり反力が大きくなっているため、軸変形を考慮しない解析条件とすると、反力の集中は発生しにくくなります。この計算条件は実際の施工時には不陸を1フロアずつ解消することを考慮した計算条件のため、実情に近い解析になることも多いかと思います。ただし、水平荷重時に関しては柱の軸変形を考慮するため、その際に反力が大きくなる傾向は発生する可能性があります。
- 梁の剛性増大率を調整する
→以下はRESP-Dの仕様に関連することになりますが、RESP-Dでは耐震壁が取り付く梁の剛性は剛に近い状態と考えて100倍にする仕様となっています。地下階の梁はもともと断面も大きいため完全な剛体になることとなりますが、この状態が実情に合わない場合には耐震壁による剛性増大率を調整することで、応力集中を緩和させることができます。RESP-Dでは全層一律での設定となるため、地下階のみ調整が必要な場合には耐力壁による剛性増大率を打ち消すように梁の剛性増大率を調整する必要があります。
今回使用したソフト RESP-D