建築基礎構造設計指針改訂講習会に参加しました

先日、建築基礎構造設計指針の改訂講習会に参加してきました。

18年ぶりの改訂ということもあり、かなり大規模な変更もあった印象です。改訂の中でも、特に杭基礎の水平抵抗、つまり応答変位法関連の改訂に注目していたのですが、大まかには以下のような変更があると認識しています。

  • レベル1でも慣性力と地盤変位の同時載荷が原則となった
  • レベル2ではすべての杭を頂部同一変位とみなして同時に載荷する群杭フレームモデルが原則となった
  • 杭体の弾塑性を考える場合、変動軸力により曲げ耐力が変わることを考慮して同じ断面の杭でも軸力状態に応じて異なる耐力を採用することが必要となった

これらの改訂を踏まえて、杭応答変位法を汎用的な解析プログラムで計算するとした場合の流れを本記事では解説したいと思います。  

応答変位法の解析モデルを汎用構造解析プログラムで作成する

1. 地盤特性をばね特性に置換

まず、ボーリングデータから得られる地盤特性から解析モデル上のばね特性を算出する必要があります。ばねの算出は建築基礎構造設計指針に記載の通りで、詳細に見比べてはいませんが、この計算方法自体は改訂前と変更されていないようです。

なお、計算式から算出されるばねは単位面積あたりの剛性となりますので、地盤特性が同じでも杭径が異なる場合は異なるばね諸元となります。 多くの場合は、このばね値の計算はEXCELを用いることになると思います。

また、算出されるばね特性は曲線になりますので、使用する予定の解析プログラムでこのような曲線が定義できない場合、等価な多折線として入力することも考えられます。    

地盤特性からばねへの変換

2. ばねを杭分割節点に配置

解析モデル上、杭は梁要素としてモデル化します。

梁要素では始点と終点の中間については解析プログラム上では変形を直接算出せず、また弾塑性を考える場合には分割された梁要素ごとに考慮されることが一般的であることから、杭をある程度細かいピッチ(例えば、1mなど)で分割して梁要素として配置することが必要になります。

また、分割された杭の節点に対し、同じ高さの地盤節点を設けます。この杭節点-地盤節点の間に、先ほど算出した地盤ばねを取り付けることになります。その際、以下のような注意が必要です。


①地表面と杭頭位置の深さは異なるので、適切にオフセットを考慮してばねを配置する。  
②杭節点同士の中間までをそれぞれの節点の支配幅として、その領域内の地盤に対するばねを配置する。  


②が特に厄介で、杭節点同士の中間でたまたま地層が分割されていることは考えにくいので、計算上その位置で地層を分割してばねを作る必要があります

杭節点位置へのばねの集約

3. 地盤変位を杭分割節点に配置

次に地盤変位ですが、解析モデルに入力する都合上、先ほどの杭分割節点のレベルにおける地盤変位を算出して入力する必要があります。

地盤変位をSHAKEなどの方法で解析的に求めた場合、あらかじめ杭の分割節点を意識してモデルを構築していない場合は、線形補間などにより当該深さ位置における変位を算出しなおして入力する必要があります。

 

杭節点位置への地盤変位の割り当て

なお、今回の改訂ではSHAKEなどの手法により解析的に変位を求める方法のほかに、略算として手計算レベルで地盤変位を算出する方法が記載されています。その場合は地盤変位算出時にどの深さ位置の変位を求めるか明確にしておく必要があります。  

4. 杭体の弾塑性特性を加力方向ごとに設定

改訂により変動軸力による杭体のM-φ関係の違いを適切に評価することが必要になりましたので、杭体の弾塑性特性は加力ケースごとに異なる諸元を設定する必要があります

図はイメージとして示したものですが、平面形状が対称ではない場合、X方向、Y方向、さらに正加力、負加力でも諸元が異なることになります。

M-φ関係は曲げひび割れ耐力式、曲げ終局耐力式から算出することになると思います。なお、曲げの降伏時剛性低下率の算出については、従来柱や大梁の降伏時剛性低下率としてよく用いられている菅野式によるαyは材端ヒンジ(主に逆対称モーメント)を仮定しているため、杭のようなモーメント分布の要素に用いるのは適用範囲外と考えられます。したがって、例えば杭断面の平面保持解析を行い、曲げ終局耐力と対応する終局曲率を算出して第2折点を算出する方法が考えられます。   

杭体のM-φ関係の設定

 

5. 群杭フレームモデルでは1~4を杭本数分繰り返す

レベル2で必要となった群杭フレームモデルでは、1~4を杭本数分繰り返し、すべての杭頭部を水平変位同一にしたモデルを作成する必要があります

したがって、もしこれまで単杭として数本ピックアップして応答変位法の計算を行っていた場合には作業量が数倍に膨れ上がることになります。もちろんある程度ゾーニングしてすべての杭をモデル化しない判断もありうるとは思いますが、杭の非線形性を考慮する場合には杭断面だけでなく変動軸力の影響も含めてゾーニングする必要は生じると思われます。

群杭フレームモデルのイメージ

 

RESP-D 杭応答変位法オプションによる対応


私たちの開発している構造計算ソフトRESP-Dのユーザー様は、応答変位法が必要になるような評定物件で活用されることが多く、かねてから応答変位法の対応は望まれておりました。そこで、昨年末に杭応答変位法オプションをリリースしました。

その時点では指針の改訂内容は明らかになっておりませんでしたが、建築学会やお客様からの情報提供および近年の技術動向を踏まえ、今回の改訂のような検討が必要になってくるのではという予測がありました。そのため、杭応答変位法オプションでは結果的に、いち早く指針の改訂に対応できる機能が数多く含まれることとなりました。

加えて、今回の指針改訂に伴い、これまで対象と考えていた評定物件以外の杭基礎設計に対しても、大いに活用の可能性が出てきたと感じています。


今回の改訂により必要となる検討自体は汎用解析プログラムがあれば技術的には可能と思われますが、前述した1~5まで作業を実際にモデル化して実施するのはかなり負担が大きいと感じます。
RESP-D杭応答変位法オプションでは、以下の入力を行うだけで、面倒なばね値計算、ばねの杭節点への割り当て、地盤変位の割り当て、各加力方向の変動軸力を考慮したM-φ弾塑性特性の設定、群杭フレームモデルの構築を行います


  • 地盤特性の入力
  • 杭断面の定義
  • 杭配置
  • 杭に対する地盤特性配置
  • 地盤Noごとの地盤変位
  • 各加力ケースの採用軸力(上部構造も入力していれば、解析結果との連動も可)

地盤特性入力

杭断面定義

杭配置

地盤特性の配置

 

地盤変位の設定

軸力の設定

これにより、複雑な解析モデルをかなり手軽に扱えるようになっていると思います。

なお、杭応答変位法オプションはRESP-DのオプションなのでRESP-Dの上部構造解析結果から軸力や上部構造慣性力を読み込んだりできますが、軸力や慣性力を直接入力することも可能ですので、上部構造は別プログラム、基礎構造のみRESP-Dオプションを使う、という運用も可能です。 

まとめ

  昨年度から販売しているRESP-D杭応答変位法オプションについて、建築基礎構造設計指針の改訂と合わせてご紹介しました。改訂内容を見るとまだまだやるべきことがあると感じますが、ユーザーの皆様のご期待に添えるよう日々進歩させていっております。ご活用いただけますと幸いです。    

今回使用したソフト RESP-D


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詳細はこちらから
   
杭応答変位法オプションを試したい方は、以下の試供版フォームからお申込みいただけます。最下部の「オプションのご希望」で「杭応答変位法オプション」にチェックを入れてください。

 

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