前回の記事は、建築が専門でないお客様に、建物の固有周期とは何か、固有周期を調べれば何がわかるかについてを説明できるようにご紹介しました。
今回は、固有値解析そのものおよび、固有モード、有効質量などの用語を専門でない方にも理解できるようご紹介したいと思います。(前回の記事:【新人手記】固有値解析について専門でない方にうまく説明できなかった件 その1)
振動の特性を求める手法
固有値解析は建物の振動の特性を見つける方法の一つです。地震発生時、大まかに建物は”どの周期で”、”どう振動するか”を明らかにするためは、それぞれ”固有周期”および”固有モード”と呼ばれる指標が必要です。前回(その1)では、固有周期についてご紹介しましたが、今回は、固有モードについてを詳しくお話ししたいと思います。
また、本記事は一般的な固有値解析をご紹介しますので、減衰という指標を考慮していません。減衰とは、空気摩擦、非構造部材の摩擦、微小なひび割れなどにより、建物自身が持つ振動を徐々に小さくする効果を表す指標です。減衰を考慮したい場合は、複素固有値解析を行う必要がございます。(【RESP-D 注目機能紹介】複素固有値解析 )
固有モードと有効質量
その1の説明では、建物を一質点(大きさのない質量の固まり)として考えており、固有周期も一つしかありません。もう少し精度よく評価したい場合は、建物を層ごとに多質点系にするモデル化方法もあります。基本的に、n質点系にはn個の固有周期が存在し、それぞれの固有周期においてどのように振動しているかの変形形状を示すものが固有モードです。建物は実際に、質点の連続体となっており、無限の固有モードを持ちますが、簡略化のため多質点系として分析する場合が多いです。
下の図は一例として5質点系の全ケースの固有モード図です。固有周期の長い方から1次固有モード、2次固有モード...と呼びます。1次モードを着目すると、最も長い周期で、建物の頂部が最も変形する揺れ方が分かります。基本的に、固有モード次数が高ければ高いほど、周期がより短くなり、揺れの形がより複雑になります。また、下の図が示した赤い交点数は固有モード数と同じになることを覚えておけばより判断しやすいと思います。
ただし、こういった固有モードは、あくまで建物はどのように振動するかを表しています。固有モード図で各質点の相対的な変形状態を見ることができますが、何センチ何ミリなど、変形量自体には意味がありません。専門でない方に勘違いされる場合が多いので説明する際にご留意ください。
また、ある固有モードが建物の主要なモードか局所的なモードかは有効質量で判断できます。建物総質量のうち、質量の大きな質点が大きく振動するほど、有効質量が大きくなります。有効質量比(有効質量/総質量)が1に近ければ、建物の主要な振動モードであると判断できます。
結局、固有値解析の目的は?
結論をまとめますと、解析業務の中で、固有値解析は初期段階で建物の「全体像」とモデルの妥当性を確認するための解析です。加えて、固有モードを確認すれば、地震時に対象建物が「どの周期で、どのように揺れやすいか」を把握することもできます。また、固有値解析は、その1でご紹介したある地震に対して危険な「共振」が発生するかどうかを予測し、問題になる固有モードを分析することで、必要の補強対策の検討にも役に立ちます。
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その1もぜひ拝見させていただきたいです。