振動評価で利用される1/3オクターブバンドについて

騒音や振動を測定されている方には日常的に使われている1/3オクターブバンド分析ですが、普通の構造屋さんにはあまりなじみが無い手法だと思います。しかし、建築構造の分野でも、交通振動や機器の振動など構造担当者が対策しなければならない問題もあり、大抵は測定波形のデジタルデータが送られてきて、はじめてこの分野のスペクトル分析は応答スペクトルや単純なフーリエ変換とかではなく、1/3オクターブバンド分析だということがわかる、というのがよくあるケースだと思います。

では1/3オクターブバンド分析とは何か、どうやって計算するのか、ということになりますが、定義としてはJIS C 1513ISOなどに示されていますので、そちらを見るのが最も正確です。しかし、これらの規格書は必要な数値情報が示されるのみで、そもそもの意味が分からない人が読むような内容ではありません。また、日本建築学会から出版されている環境振動系の書物に解説がありますが、規格自体を読みやすくしたものが大半だと思います。RESPのお客様からは、もっと構造屋さんの日常に近いところから説明してくれる「入門の入門」のような説明は無いのかという声を聞きます。説明の正確さよりも仲間内の雑談に近いざっくばらんな表現はブログでしかできないということでここに書くことにしました。

まずこの手法の目的は、現場で測定しながらスペクトル分析を行うというごくシンプルなものですが、JISの記述が分かりにくくなっている原因は、手法の理想を記載するのではなく、その時代の実現方法を前提に記載したということだと思います。従って、超安価にデジタル処理ができるようになる遥か昔に、当時実現可能なアナログフィルタ(バンドパスフィルター)をたくさん並べて処理するハードウェアを前提として規定されており、ひとつのバンドごとに下図のようなバンドパスフィルターの特性が示されています。

出典:日本建築学会「環境振動・固体音の測定技術マニュアル」

本来は図中のf1f2の間の成分を抽出したいのに、なぜわざわざこのような末広がりの特性が規格で定められているのかという疑問については、アナログフィルターだからということになると思います。理想的なフィルターが存在すれば、f1f2の間の成分だけを抽出できるはずですが、制作できない規格を作っても無意味なので、当時実現可能なアナログフィルターの特性を定めたということになると思います。FFTが安価に使える現代ではアナログフィルターの特性に拘る必要は無いと思いますが、騒音機器メーカーの製品では過去の測定結果との連続性を考慮して、アナログフィルターをデジタルでシミュレートするための計算手法が採用されていたりします。

1/3オクターブバンドでは、上記のようなフィルターを1オクターブ(周波数が倍変化する)毎に3つ並べて処理する訳です。なぜ3分割か、という点については諸説あるようですが、あくまでも評価の主体は人間であることが多いので、人として認識できる分解能にしたということだと思います。1/3オクターブは音楽でいう12音階の三分の一である4階分に相当しますので、キーが12つ変わった位ではよく訓練された人でないと気づきませんが、4つも変われば明らかに違いに気づく訳で、これ以上粗くすると体感としてマズいという分解能と言えると思います。また、目盛3つで1オクターブ(2倍の周波数)ということは、目盛10個で約10倍(≒1.26^10)の周波数ということで、キリの良さもあると言われています。

実際にFFT分析と1/3オクターブバンド分析の結果を比較した結果を下図に示します(RESP-F3Tの内蔵機能を使って計算しました)。加速度ピックアップで拾った加速度波形をFFTでスペクトル分解した後に角速度(ω)で割って疑似速度に直したスペクトルと、対応する1/3オクターブバンド分析の結果を重ね描いたものです。FFTに対して低振動数側では平均値的な線となり、高振動数側ではピークを包絡した大きめの値になる傾向はありますが、目論見通りギザギザが大胆に平滑化されて把握しやすくなっており、計測対象が同じなら計測の度に同じ結果が得られそうな雰囲気を感じ取っていただけるかと思います。

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