一般的なブレースは細長い形状をしており、圧縮力が掛かると引張降伏耐力よりも小さい荷重で座屈してしまいます。このようなブレースをモデル化する場合は、圧縮耐力を安定座屈耐力で降伏させる、引張専用ブレースとしてモデル化し圧縮力を受けないようにするなどの方法が一般的です。しかし、本来は座屈耐力まで圧縮力を負担できるため、上記のようなモデル化をするとブレースの圧縮側の性能を過小評価してしまいます。
ブレースの座屈挙動については、実験や解析を基に数多くの研究が行われており、様々な履歴特性が提案されています。そこで本記事では、座屈挙動を考慮した履歴特性のうち若林モデルについて紹介します。

1. 復元力特性の概要

1.1 若林モデル

若林モデルは、京都大学防災研究所の若林先生らが参考文献1)2)で提案した、繰り返し軸方向力を受ける鉄骨単一筋違の復元力特性です。
若林モデルは、大きく4つの領域に分けて考えられており、ほぼ全断面が引張降伏した段階のStageA、座屈により屈曲した状態から伸びきっていく段階のStageB、部材が座屈し耐力が低下していく段階のStageC、弾性除荷の段階のStageDで構成されています。このとき、座屈耐力は(1)式で定められます。
なお、StageA~StageDの詳細な履歴則については複雑であるため、本記事では説明を割愛します。

このとき、NCは座屈耐力、σyは降伏強度、Aは断面積、Eはヤング係数、λは細長比を表しています。また、ncは(2)式の解となります。

1.2 修正若林モデル

若林モデルは、繰返し載荷時における初期座屈耐力以降の座屈耐力を簡易に表現するため、常に安定ループの耐力で評価しており、座屈耐力の劣化は考慮されていません。そのため、様々な文献3)4)5)で座屈耐力の劣化に対する表現手法が提案されてきました。これらの座屈耐力の劣化を考慮したモデルを総じて修正若林モデルと呼んでいます。
上記文献において座屈耐力の劣化式は、圧縮ひずみの関数で提案されており、圧縮ひずみの累積値が大きくなるほど座屈耐力が小さくなります。RESPでは修正若林モデルとして、この座屈耐力の劣化式を追加した若林モデルを実装しています。

耐力劣化を考慮した座屈耐力の式は、以下の通りです。

このとき、Ndは劣化後の座屈耐力、ζiはiループ目の圧縮ひずみを表しています。

2. RESP-Dで若林モデルを設定する方法

RESP-Dでは部材復元力特性の直接入力から、若林モデル及び修正若林モデルを設定することができます。図に若林モデル及び修正若林モデルの設定画面を示します。

3. まとめ

本記事では座屈挙動を評価できる若林モデルの紹介をしました。
・ブレースの座屈耐力を安定座屈耐力よりも大きく取れる
・修正若林モデルにより、繰返し載荷による座屈耐力の劣化を考慮できる

ただ、若林モデルは負剛性を持っているため、他の履歴特性に比べて不安定になりやすい傾向にあります。特に荷重増分解析は、単調載荷のため建物全体の復元力特性で負剛性になると確実に解析が発散してしまうため、安定座屈耐力でモデル化する方が無難です。

次回で実際の各要素の履歴吸収エネルギーの差などを見ていきたいと思います。

参考文献

1) 柴田 道生,中村 武,若林 實:鉄骨筋違の履歴特性の定式化-その1 定式化関数の誘導-,日本建築学会論文報告集,第316号,pp.18-24,1982.6
2) 柴田 道生,若林 實:鉄骨筋違の履歴特性の定式化-その2 応答解析への適用-,日本建築学会論文報告集,第320号,pp.29-35,1982.10
3) 谷口 元,加藤 勉,中村 紀吉,高橋 泰彦,佐伯 俊夫,広谷 勉,相川 勇治:鉄骨X型ブレース架構の復元力特性に関する研究,構造工学論文集,Vol.37B,pp.303-316,1991.3
4) 竹内 徹,中村 悠,松井 良太,小河 利行,今村 晃:部材破断を考慮した鋼管トラス鉄塔の耐震性能,日本建築学会構造系論文集,第76巻,第669号,pp.1971-1980,2011.11
5) 竹内 徹,近藤 佑樹,松井 良太,今村 晃:局部座屈を伴う組立材ブレースの座屈後履歴性状および累積変形性能,日本建築学会構造系論文集,第77巻,第681号,pp.1781-1790,2012.11
6) 日本建築学会:鋼構造座屈設計指針,2018.2

今回使用したソフト RESP-D


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