問題

(難易度高めです。)
以下に示す鉄骨造のモデルにて、Y2通り大梁のX3通り側の材端条件を剛接からピン接にすると、極端に周期の長いモード(Y2通りの大梁が上下に振られる)が出るようになりました。


X3Y2の位置には、ねじり剛性をほとんど負担しない直交梁と、柱頭ピンの柱が取り付いているだけなので、Y2通り大梁のX3通り側の材端条件を剛接にしてもピン接にしても、固有モードに影響はないはずです。

(問題)さて、なぜ剛接とピン接で固有値解析結果に差分が生じているのでしょうか?
ちなみに、柱梁接合部は仕口パネルでモデル化する設定としており、これが重要なヒントとなっています。

考えている間にネタバレしないように、少し間隔をあけておきます。

答え

少し長いですが、答えに向けて順番に状況を整理していきます。

①:X3Y2の位置に柱が取り付くことで、仕口パネルが生成されます。
端部がピン接の柱であっても、剛性計算条件の設定により、柱梁接合部に仕口パネルが生成されます。
ピン接の柱をブレースでモデル化する場合は仕口パネルが生成されないため、この記事の問題は発生しません。

②:柱梁接合部を仕口パネルでモデル化する場合は、仕様上、材端ピンではなく仕口パネル端ピンとなるため、ピン接のモデルで仕口パネルがあると、X3Y2の位置に曲げモーメント(=仕口パネル長さ×せん断力)が発生します。
すなわち、Y2大梁と境界条件だけを考えると、X3Y2の位置で仕口パネル要素がぐるぐる回転する不安定構造物となってしまいます。

私は①と②になかなか気付けず、ピン接で仕口パネルがある場合でも上図(1)の状況を想定してしまい、しばらく悩みました。

補足として、仕口パネル端がピン接となる話は、以下の記事で紹介している「剛域端がピン接となる話」と内容が似ています。
【RESP-D Q&A】材端ピンとした場合の材端モーメントについて
(仕口パネルと剛域の両方がある場合は剛域端がピン接となります。)

③(答え):仕口パネルにより、ピン接のモデルでは②で述べた回転力に抵抗できなければ不安定構造物となってしまいますが、大梁の微小なねじり抵抗によって極端に周期の長いモードが出ていました。
補足として、RESP-Dでは大梁のねじり剛性を無視すると指定した場合でも、解析の安定性のために微小なねじり剛性(考慮する場合の1/105)を持たせています。

教訓

パネルに取り付く部材がすべてピン接となる場合、この記事で述べた状況が発生する可能性があるため注意が必要、という教訓を得ました。

 

今回使用したソフト RESP-D


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