MystructureNoteが日本建築学会教育賞を受賞しました

RESPチームとも関係が深いMystructureNoteチームの活動が、この度日本建築学会の教育賞を受賞いたしました。
MystructureNoteは私たちも日常業務の中でちょっとした検証に活用しています。 今回はその活用例を記事にしました。

なぜMystructureNoteを使うのか

RESPチームはユーザーサポートを日常的に行っていますが、複雑な建物における挙動が果たして妥当なのか疑問を持ってお問合せいただくユーザー様も少なくありません。 複雑な建物の場合、入力条件や計算条件の設定が適切でなく想像と異なる結果が生じるケースもあれば、構造解析の特性として実状とギャップがある結果が出るケースもあります。 そういった場合には問題の切り分けを行いながら理由を探していく必要がありますが、大規模なモデルで検証を行っていくとなかなか原因にたどり着きません。 そこで、仮説を立てたうえでシンプルな問題に落とし込み、理解を深めるということがよく行われます。それにうってつけのツールがMystructureNoteというわけです。シンプルな平面フレームの問題であれば、筆者が知りうる限りでは市販のどの構造解析プログラムよりも早くモデリングでき、結果を可視化することができます。

RESPチームにおける活用例

壁エレメントを水平方向に分割する

一般的な建築構造解析では、耐震壁は壁エレメントでモデル化されます。 建物の中には連スパンに渡る耐震壁が存在する場合がありますが、直交方向にラーメンが形成される場合、直交方向のラーメンの柱が壁の途中を通るため、壁エレメントは柱の位置で複数に分断されます。せん断変形が支配的な耐震壁では分割しても問題ないように思えますが、実際には細かく分割するほど曲げ剛性が低下し、壁全体が柔らかくなってしまいます。 この理由をユーザー様にうまく説明できずにいたのですが、改めてMystructureNoteでモデル化して眺めてみたところ、次のように整理できました。
  • 断面積 A = B×D は、Dをn分割しても合計は元と同じ → せん断剛性は変わらない
  • 断面二次モーメント I = B×D³/12 は、Dが3乗で効く。n分割すると各片は B(D/n)³/12 なので、n個合計しても元の 1/n² にしかならない → 曲げ剛性が大幅に低下
つまり、せん断だけを見れば分割しても同じですが、曲げには弱くなるため、分割すればするほど全体が柔らかくなる、というわけです。

ラチス梁の等価断面性能を算出する

鉄骨のラチス梁を、剛性が等価な1本の梁(等価断面)に置き換えたい場合があります。 このような場合は、MystructureNoteで実際にラチスを組んで解析し、得られたたわみから等価な曲げ剛性を逆算する、という使い方ができます。 弦材やラチス材の断面を変えたとき全体のたわみがどれだけ変わるかをその場で確認できるので、非常に便利です。
入力はこのような感じです。 いちいち節点ごとに区切らなくても、交点で部材を分割してくれるのも便利です(分割しないようにする設定も用意されています)。

施工時解析の各ステージ比較

施工段階を考慮すると建物が完成した状態で荷重を載荷する従来の解析と比較して、応力や変形に差異が生じます。簡単な例としてMystructureNoteで解いてみました。 左と中の加算が施工段階解析の結果で、右が従来の一体解析の結果ということになります。 この結果の場合、変位は概ね同等になりますが、2Fの柱脚モーメント(施工時解析 56.7kNm に対し、一体解析 197.9kNm)や2FLの梁端モーメント(施工時解析 268kNmに対し、一体解析 304kNm)はやや乖離がある結果となっています。 施工時解析が必ずしも真と言えるわけではありませんが、実際の施工過程を考慮すると応力の分担がこういったオーダーで変動しうる、ということは重要な示唆だと感じました。
左: 2FLまで部材生成、
2FL荷重載荷
中: 3FLまで部材生成、
3FL荷重載荷
右: 3FLまで部材生成、
2FL・3FL荷重を同時に載荷

まとめ

今回はRESPチームにおけるMystructureNote活用事例として3つの事例を挙げてみました。実際にはこれ以外にも大小さまざまな事例がたくさんあるのですが、記事として一般に公開するために例に落とし込めたものを挙げています。 受賞理由にも記載されている通り、MystructureNoteは構造的直観力を養うためには非常に有用なツールであると感じています。 複雑な問題をいかにシンプルな問題に落とし込み理解を深める、こういったスキルはAI時代にこそ設計者にとって必要な能力になってくるのではないでしょうか。

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