本記事は2014年度建築学会大会梗概 「間柱型制振構造物の多質点系振動モデル化に対する適用性の検討 その 1 ダンパー性能変動による適用性の検討」の内容を再編集したものです

著者: 鈴木 壮、會田裕昌、梁川幸盛、宇佐美祐人、木村まどか

Keyword: 制振構造、時刻歴応答解析、間柱型ダンパー、質点系解析、立体振動解析、付加系モデル

1. はじめに
間柱型配置の制振ダンパーを建物に配置する場合、間柱の周辺部材の剛性にダンパーの効果が大きく影響される。この影響は立体骨組モデルでは考慮されるが、多質点系振動モデルに間柱型制振ダンパーを考慮する場合には注意を要する。代表的な評価方法としては荷重増分解析を行った後架構負担せん断力とダンパー負担せん断力を別々に集計して層の復元力特性をモデル化する(以下、分離モデル)と石井・笠井らの論文 1)によるモデル(以下、付加系モデル)がある。このうち付加系モデルでは、ダンパー分離モデルと比較してパラメータスタディに適しており実務上のメリットは大きいが、ダンパーを入れ替えた場合や配置が不均一な場合にどの程度妥当性を保てるか検討を行った事例は多くない。本報では実務におけるダンパー検討のパラメータスタディを行い、付加系モデルの適用性を確認することを目的とした。

      図 1 周辺部材剛性がダンパー変位に与える影響

2. 各多質点系振動モデルの特徴
各モデルのフローチャートを図 2 に示す。ダンパー分離モデルは周辺部材の塑性化による影響が考慮可能であるが、ダンパーを入れ替える際には荷重増分解析から再計算する必要がある。一方付加系モデルは、ダンパーを入れ替える場合でも多質点系モデルの変更のみで解析が行える。ただし、付加剛性を弾性として設定するため、周辺部材の弾塑性化による影響が考慮できないという点に注意が必要である。
                            図2 各手法のフローチャート


図 3 モデル図(上:伏図、下:3Dモデル図)

3. 多質点系振動モデルによる精度比較
本報では参考文献 ²⁾のテーマストラクチャS造 10 層モデル(トリムタイプ)をベースとしてモデルを設定した。計算にあたっては「RESP-D((株)構造計画研究所開発・販売)」を用いた。入力地震動はElCentroNSを最大速度 50 kineに基準化した波形および乱数位相の告示波を第 2 種地盤相当の地盤を想定し引き上げたものを使用した。なお、告示波についてはパラメータスタディの都合上、最大層間変形角が 1/150 程度となるように入力倍率を調整して用いた。また、付加系モデルの架構部層復元力特性は本来、状態Nによる荷重増分解析結果を用いることが望ましいが、実務における運用を考慮し間柱ダンパー剛性を考慮した通常のモデルから架構部負担せん断力を分離して採用することとした。なお、妥当性の確認として固有周期を表 1 に示す。最大応答結果を図 4,5 に、間柱ダンパー履歴を図 6 に示す。いずれの多質点系モデルも比較的精度よく計算できていることが確認できた。


図 4 基本モデル 層間変形角(左:ElCentroNS、右:告示乱数)


図 5 基本モデル 層せん断力(左:ElCentroNS、右:告示乱数)

 表1 基本モデル固有周期


図 6 間柱ダンパー履歴 (左:ElCentroNS、右:告示乱数)

4. ダンパー性能変動に関する検討
続いて、ダンパー性能を変動させるパラメータスタディを行い適用性について確認を行った。入力地震動は 3 と同様とした。3 のモデルを基本モデルとし、性能変動としてダンパーの降伏耐力および剛性をそれぞれ 50 %,150 %としたモデルについて検討を行った。付加系モデルの架構部分層復元力特性は 3 で用いた層復元力特性をそのまま用い、ダンパー部分のみ性能を変更して計算を行うこととした。最大層間変形角と層せん断力を図 7~10 に示す。また、基本モデルとの誤差を図  11,12 に示す。結果より以下のことがわかった。
1.いずれのモデルも立体モデルとの誤差は最大でも 15 %程度となり、多くの層で 10 %以下の誤差となっている。
2.ダンパーの性能を変動させたモデルの結果と基本モデルの結果において、付加系モデルでさほど立体との誤差が大きくないことから架構部分の層復元力特性を状態Nから計算していない影響は小さいと考えらる。
3.最大応答時に大梁のヒンジが発生する下層階でいずれのモデルも精度が低下する傾向が見られた。
4.塑性化の影響により層せん断力よりも層間変位の誤差が大きくなる傾向が見られた。


図 7 ダンパー50% ElCentroNS(左:層間変形角(rad)、右:層せん断力(kN))


図 8 ダンパー50% 告示乱数(左:層間変形角(rad)、右:層せん断力(kN))


図 9 ダンパー150% ElCentroNS(左:層間変形角(rad)、右:層せん断力(kN))


図 10 ダンパー150% 告示乱数(左:層間変形角(rad)、右:層せん断力(kN))



図 11 付加系モデルと立体モデルの誤差(左:層間変形角、右:層せん断力)


図 12 ダンパー分離と立体モデルの誤差(左:層間変形角、右:層せん断力)

5. まとめ
1.付加系モデルとダンパー分離モデルにおいて立体モデルと比較して精度のよい結果が得られることを確認した。
2. パラメータスタディの結果、ダンパー分離モデルと比較して作業手順が少ない付加系モデルにおいてもダンパー分離モデルと同程度の精度が得られることが確認できた。
その2 ではダンパー配置が不均一な場合の検討を行う。

参考文献
1)石井正人・笠井和彦:多層制振構造の時刻歴解析に用いるせん断棒モデルの提案,日本建築学会構造系論文集, NO.647, pp103-112, 201.1
2)パッシブ制振構造設計・施工マニュアル第 2 版, 日本免震構造協会, 2007

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